いま日本は「モノが安くて過ごしやすい」状態ですが、今後、「給料は上がらないが物価だけ高くなる」状態になる可能性があります。
寿司チェーンの「くら寿司」は、日本では1皿110円の商品が主体ですが、アメリカで展開する「くら寿司USA」は、1皿3.15ドル(2021年11月13日現在の為替では359円)と3倍以上に設定されています。
「くら寿司」は値段の開きについて、「(日本と比べて)人件費が高い」からだとしています。同様に、うどんチェーンの「丸亀製麺」は、日本では「かけうどん並」が320円、アメリカのカリフォルニア店では「KAKE」が5.75ドル(655円)と約2倍です。
日本で「かけうどん」が600円を超えたら、高すぎて「えっ」と感じてしまうと思いますが、アメリカでは安すぎて「えっ」と消費者は驚きの声をあげるのだといいます。マクドナルドの「ビックマック」は、日本では390円、アメリカでは5.65ドル(621円)です。アメリカのマクドナルドでは今、ドリンクやポテトも頼んで1食1000円で済ますのは不可能でしょう。
過去20年の消費者物価指数(モノの値段がどれぐらい上がったかを示す)を見ると、日本はわずか2.6%ですが、アメリカは54%、中国は60%、ユーロ圏では40%も上昇しています。
日本であまりに長期間にわたって起きたデフレによって、企業の「価格転嫁(値上げ)するメカニズム」が破壊されてしまったのかもしれません。商品・サービスの値上げができないと企業は儲からず、賃金が上がらず、結果的に物価が上がらない。安い賃金で働く人が増えた結果、他国では絶対に成り立たないような格安のファストフードチェーンが誕生したのです。
しかし、最近、家計を直撃する値上げラッシュが起きています。今年10月、農水省は製粉会社への小麦売価を20%近く値上げしました。これにより、「山崎製パン」は食パンの「ロイヤルブレッド」や「超芳醇」「ふんわり食パン」などで平均9.0%、菓子パンの「高級つぶあん」「ナイススティック」などで平均6.8%それぞれ値上げしています。
また、欧州で問題になっている天然ガスの高騰と冬の到来が相まって、ガソリン代は今後さらに高くなる見込みです。牛丼チェーンの「松屋」も牛丼並を320円から380円へと値上げしました。「吉野家」もその動きに追随。100円ショップでは、300円、500円の価格帯の商品が今後ますます増えていくでしょう。
企業がサービスや商品を「適正価格」で消費者に提供するシステムや、その売り上げを労働者に還元する取り決めを世の中に広めていくことが重要なのかもしれませんね…
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