世界保健機関(WHO)は1月14日、新型コロナウイルス感染症の重症者の治療薬として「バリシチニブを強く勧める」との指針を発表しました。「バリシチニブ」は、日本では関節リウマチなどの薬として承認されている飲み薬で、昨年4月には新型コロナによる肺炎の治療薬として適応が追加されました。
国境なき医師団(MSF)は、この薬の普及が特許の独占によって妨げられないよう各国政府に早急の対策を求めています。
WHOがこれまでに推奨した新型コロナ治療薬のなかで、トシリズマブとサリルマブはともに薬価が高く、多くの低・中所得国で供給不足が続いています。バリシチニブは似た効果を持つため、入院患者にとって代替薬になると期待されています。
バリシチニブは、関節リウマチなどに使用する薬としてすでに承認されています。また、インドやバングラデシュではジェネリック薬(後発薬)が出回っているので、特許をもつ米製薬イーライリリーが設定している価格よりもはるかに安く手に入ります。インドでは5.50米ドル(約629円)、バングラデシュでの最安価格は6.70米ドル(約767円)となっていて、これはイーライリリーが7月に提示した2326米ドル(約26万6187円)という法外な価格の約400分の1になっています。
しかし多くの国ではバリシチニブが特許で独占状態にあるため、ジェネリック薬の入手を期待できません。イーライリリーはコロナの感染拡大が深刻な国々を含む多くの地域で特許を申請または取得しています。
バリシチニブはまた、「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定
(TRIPS協定)」の義務免除が急務であることを新たに示しています。世界貿易機関(WTO)加盟国が、特許権を含む知的財産権の保護義務を一時的に免除されれば、新型コロナの医療ツールの生産拡大と普及を妨げる法的な壁を包括的に取り除くことができます。これはジェネリック医薬品の製造・供給を阻止しようとする特許や出願中の特許も対象となります。
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