需要に応じた価格設定―納得感のある収益化

はじめに

FC町田ゼルビアは、日本の東京都町田市をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。

2022シーズン2月~3月にトライアルとしてダイナミックプライシングサービス「D+」を導入、2022シーズン4月以降全試合で導入いただいております。 

今回は、チケット担当者の方に、導入前の課題から効果そして今後の展望まで詳しくお伺いしました! 

導入のきっかけは「収益の積み上げ」と「販売機会の最大化」

Q.ダイナミックプライシング導入のきっかけを教えてください 

クラブ経営において入場料収入は大きな柱ですが、同じ価格で全試合を販売していると、試合ごとの需要差を活かしきれないと感じていました。 

たとえば、人気のある試合では十分な収益を確保できる一方で、価格を上げすぎるとファンの負担が大きくなる。逆に、集客が課題の試合であっても、しっかりと収益を確保することが重要になります。 

ダイナミックプライシングは、こうした「試合ごとの収益バランス」を整えながら、全体としての入場料収入を最大化できる仕組みだと考えています。 

単に価格を上下させるのではなく、試合ごとの特性に合わせて“適正な価値”を設計するという点に魅力を感じました。 

初期導入時の反応と学び

Q.初期導入時には、結果をリリースで公開されていましたが、反響はいかがでしたか 

【報告】価格変動制「ダイナミックプライシング」試験導入 | お知らせ | FC町田ゼルビア 

導入の意図や仕組みをきちんと発信したことで、社内の理解が一気に進みました。 
クラブとして「なぜこの仕組みを取り入れたのか」を明確に共有できたのは大きかったです。 

DP導入で新施策を展開

Q.DPを導入してどのような業務変化がありますか

まず大きいのは、販売初速をより意識するようになったことです。 
「いつ、どの期間で売上をつくるか」を明確に決め、販売の波を意図的にコントロールするようになりました。 
以前は販売期間を一律で見ていましたが、DPを導入してからは、試合ごとにどのタイミングで最も売れるか価格がどのように動くかをデータで把握し、販売スケジュールや施策の設計に活かしています。 

また、AIが出した価格を信じて運用する姿勢も定着しました。 
導入初期は「少し上がりすぎでは?」と感じていましたが、結果的にAIが提示する価格の方が最適であるケースが多く、人の感覚だけでは読み切れない需要を捉えていると実感しています。 

さらに、DPの安定運用によって新しい施策の幅が広がったことも成果のひとつです。 
たとえば小中高生向けチケットをお求めやすい価格で販売できるようになりました。 
収益基盤が安定したことで、低価格チケットやファミリー層への施策を安心して展開できています。 

過去3シーズンのゼルビアサポーターズシートの購入比率を見ても、年々小中高生の比率を増やすことができています。 

リーグ戦@町田GIONスタジアムでのゼルビアサポーターズシート購入比率

DPを導入しデータが日常に溶け込む

Q.DPを導入して、チームやスタッフの意識はどのように変わりましたか?

DP導入によって、販売データを日々モニタリングすることが定着しました。
毎日の売上推移や価格変動を細かくチェックするようになり、数字を見て動くという意識が浸透しています。

以前は「売れている・売れていない」といった感覚的な判断に頼る場面も多かったのですが、いまは「どの価格帯で、どのタイミングで売れたか」をデータで確認し、次の一手を考えるようになりました。
数字を根拠にした議論や意思決定が自然に行われるようになったことで、チーム全体の判断スピードと精度が格段に上がっています。

今後への期待 「個席単位」での最適化と体験価値の向上へ

Q.今後、さらに取り組みたいことは?

今後は、「個席単位での最適化」にも取り組めたらと考えています。
同じエリア内でも、通路側や前列、選手に近い席などによって体験価値は変わってきます。
そうした違いを少しずつ価格に反映できるようにしていくことで、ファンの満足度を高めながら、スタジアム全体の稼働率を上げていきたいです。

また、単に価格を上げることが目的ではなく、「飛び席(ポツンと残る未販売席)」を減らし、より多くの方にスタジアムで観戦してもらうための仕組みとして検討しています。
これまでの試合単位での需要予測に加え、将来的には“1席ごとの価値”をより丁寧に可視化していくことが理想です。

最後に

DPは、導入して終わりではなく、現場が時間をかけて育てていく仕組みだと思っています。
最初の1年は正直、手探りの部分も多かったです。

しかし、運用を重ねる中で、AIの動きを理解し、「このロジックならこの動きになる」と腑に落ちるようになりました。いまでは、AIが出した価格を受け入れて「我慢する」ことも、結果的には正しい判断だったと思えるようになりました。

大切なのは、AIに任せる部分と、人の判断とのバランスを取ることです。

AIが提示する価格をベースにしながらも、「スタジアム全体の雰囲気をどう作るか」といった人ならではの視点を組み合わせていくことで、最終的にクラブにとって最も良い価格戦略につながると考えています。

まとめ

FC町田ゼルビアでは、試合ごとの需要に応じた最適な価格設定と、販売機会の最大化を目的に、2022シーズンよりダイナミックプライシングサービス「D+」を導入しました。

D+導入により、販売初速や価格変動をデータで把握し、試合ごとに戦略的な販売設計を行う数字で動く文化が定着しました。

また、安定した収益基盤をもとに、小中高生向けの低価格チケットやファミリー層への施策など、クラブ独自の販売施策を柔軟に展開できるようになりました。

現在は「個席単位での最適化」や「体験価値に基づく価格設定」など、より一歩進んだチケット運用への挑戦も始まっています。

ダイナミックプラス株式会社は、今後もこうした取り組みを通じて、クラブ経営の持続可能性とファンの観戦体験価値向上に貢献してまいります。

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