
はじめに
鹿児島ユナイテッドFCは、日本の鹿児島県鹿児島市をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。
これまでチケット価格は全試合一律の価格で販売を行っておりましたが、2025シーズン2月~3月にトライアルとしてダイナミックプライシングサービス「D+」を導入、2025シーズン4月以降全試合で導入いただいております。
今回は、導入から運用まで実際に携わられたチケット担当者の方に、導入前の課題から効果そして今後の展望まで詳しくお伺いしました!
価格の妥当性・販売偏り・収益性
――クラブ運営における三重の課題
Q.導入前、どのような課題を抱えていらっしゃいましたか?
導入以前は、クラブ運営において以下の3つの課題を抱えていました。
第一に、座席価値の妥当性です。従来はメインスタンドとバックスタンドを中心にクラブ側が一方的に価格を設定していましたが、その価格が市場や来場者の実際の評価に見合っているのか、検証が困難でした。
第二に、購入タイミングの偏りです。チケット販売の約半数が前日や当日に集中しており、来場者数を事前に正確に把握できないため、試合当日の運営体制やリソース配分が直前対応となり、効率的なオペレーションに支障をきたしていました。
第三に、収益性の低下です。来場者数を最優先に考えてきた結果、他クラブと比較してもチケット単価が低く、改善が必要でした。
懐疑から確信へ
――クラブ課題に即した解決策としての
ダイナミックプライシング
Q.導入前、ダイナミックプライシングはどのようなイメージでしたか?
ダイナミックプライシングそのものについては以前から理解していましたが、導入することがクラブの経営に本当に役立つのかについては懐疑的でした。クラブ運営の実状に合致するのか、慎重に見極める必要があると考えていたからです。
しかし、DP社から具体的な仕組みや事例を伺う中で、我々が直面していた座席価値の妥当性、購入タイミングの偏り、収益性といった課題に対し、ダイナミックプライシングが有効な解決策の一つになり得ると理解しました。その段階で、導入に向けた本格的な検討を開始しました。
直前購入の偏りを是正し、
指定席化とダイナミックプライシングで
早期購入を促進
Q.導入の決め手は何でしたか?
導入を決めた最大の理由は、座席の価値の再評価が必要だと感じたからです。一概に“メインスタンドが最も価値が高い”というわけではなく、バックスタンドの方が全体を見渡しやすいと感じる方も多い。そうした多様なニーズを反映できる点で、ダイナミックプライシングは有効だと判断しました。
また、販売の時期が前日や当日に偏っていたことです。全体の約5割が直前に購入されており、来場者数の見通しが立たず、運営体制や会場準備が後手に回ってしまうという経営上の課題もありました。
そこで、より早期にご購入いただけるように販売形態を見直し、自由席中心から指定席中心へと大きく転換しました。昨年までは2割程度だった指定席を今年は8割まで拡大し、さらにその指定席にダイナミックプライシングを導入することで、“早めに買うほどメリットがある”仕組みを整えました。これにより、クラブ側は運営準備の精度を高められると同時に、ファンの皆さまにとっても安心感と快適さを提供できると考えています。
想定以上の価格上昇も市場需要を正しく反映
Q.ダイナミックプライシングを導入したことで販売枚数に影響はありましたか?
人気のある試合では、価格が上がってもファンの方にしっかり購入いただけていますし、一方で需要が低い試合では価格が下がることで購入を後押しできています。
ダイナミックプライシングを導入したことにより、チケットの販売枚数に影響があったかは、比較が難しい状況ではあります。ただ、昨シーズンと比較して鹿児島ユナイテッドFC側のチケット販売枚数はほぼ変わらない状況です。(ビジターはカテゴリーの変化もあり下がっています)
チケット収益改善から
ファンクラブ拡大へ広がる波及効果
Q.導入してからどのような効果がありましたか?
収益性向上とファンクラブ会員拡大が大きな効果です。
理由としては、ファンクラブの特典チケットはダイナミックプライシングの影響を受けない設計にしてます。そのため、ユナイテッドサポートメンバーズ(ファンクラブ)のお得感が大きく入会数が伸びました。その結果、会員数は4,000人を突破し、過去最高を記録しています。
このように、ダイナミックプライシングは単にチケット収益を改善するだけでなく、副次的にファンクラブの拡大を促す効果も生み出し、クラブ経営全体に好影響をもたらしていると考えています。
変動価格と固定価格を併用し、
幅広いファンニーズに対応
Q.ダイナミックプライシングをどのように活用していますか?
ダイナミックプライシングはすべてのエリアに一律で適用しているわけではありません。クラブとしては、まず販売の中心となる指定席に導入しつつ、一部にはあえて価格を固定したエリアも残しています。
これは、幅広いファン層に安心してチケットを購入いただくためです。たとえば、「価格が変動するからこそ早めに買おう」という動機づけが生まれる一方で、「価格が変わらない方が安心して買える」というニーズも存在します。その双方を満たすために、DPを適用するエリアと適用しないエリアを組み合わせて運用しています。
加えて、こうしたハイブリッドな運用を行うことで、全体的にエリアごとの販売バランスも取れるようになったと感じています。結果として、収益性の改善だけでなく、座席需要の平準化にもつながり、クラブ運営の安定性向上に寄与しています。
通路側や前方席など、
人気度に応じたきめ細やかな運用を期待
Q.今後DP社に期待することは何ですか?
今後については、個席単位でのダイナミックプライシングの活用を検討していきたいと考えています。例えば、通路側や前方席のように人気の高い座席は高めに、中央寄りなど相対的に選ばれにくい座席は低めに設定するといった形で、より細やかに需要を反映できる可能性があります。
実際にどの程度の効果を発揮するかは、運用実績を踏まえながら慎重に見極めていく必要があると考えています。
挑戦を続け、
持続的なクラブ経営とファン満足を両立
終わりに
クラブが収益を上げることは、持続的なクラブ経営のために欠かせない前提条件です。その認識のもと、ダイナミックプライシングをはじめとする新しい施策に積極的に挑戦し、クラブの発展とファンの皆さまへのより良い観戦体験の提供を両立させていきたいと考えています。
まとめ
鹿児島ユナイテッドFCでは、持続的なクラブ経営のために、チケット販売の仕組みを見直し、指定席化やダイナミックプライシングの導入といった新しい取り組みに挑戦しました。
その結果、収益性の改善だけでなく、ファンクラブ拡大やファン体験向上といった多面的な効果を実現しています。
ダイナミックプラス株式会社は、こうした取り組みを通じてクラブ経営の持続可能性とファンの皆さまへの価値提供に貢献し続けてまいります。
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