近年、大
企業では顧客・商品毎にリアルタイムで価格算出を行うツールにより価格戦略を改善している。特に、B2Bビジネスを行う企業の営業部門では、ダイナミックプライシング(以下、DP)導入が浸透している。しかしながら、こうした価格算出ツール導入は幾つもの課題を孕む。例えば、過去データは成形されておらず、競合データも入手できず、営業部門が推奨価格を取り入れないなどが主な問題だ。このような課題は多くの企業に馴染みがあるのではないだろうか。実際、DP導入には、解析技術と同等またはそれ以上に、働く人々や導入プロセスが重要となる。
実際、ある医療技術開発会社では営業部門の人々へどのようにDPツールを実務に生かすという教育を徹底した。その成果もあり、同社は4〜8%もの利益改善を達成した。この事例が示す通り、DPが企業に与えるインパクトは、営業部門がどれほどこの新たなツールに適応できるにかかっているといっても過言ではないのだ。
ダイナミックプライシングの本当の価値とは?
第1に、DPによって企業は、「いつ価格を上げて需要の増加に対応すべきか」と「いつ価格を下げて販売量の減少シグナルに対応すべきか」をより正確に理解・予測が出来る。より詳細な洞察を提供するDPは、意思決定プロセスを改善させ、組織の判断をスピードアップするのに役立つ。
第2に、DPは自らアルゴリズムを強化させる。営業チームが新しい価格設定アプローチをテストする際、彼らはシステムに営業成果の情報をフィードバックして、精度を徐々に改善し、新しい洞察を得ることが可能だ。
一つ意識をする必要があるのは、DPアルゴリズムは各社独自のものが必要だという点だ。会社毎に、これまで蓄積された過去データや顧客の特性、更に販売する製品や価格の流動性は異なるため、独自のアルゴリズムが求められる。また、そうして開発されたアルゴリズムは、実際に運用されていく中で新たなデータをインプットすることで、自ら学習していく。そうした過程を経て、カスタマイズされたDPが可能となる。
人々 — マインドセットの変化と社員教育
冒頭で述べた通り、良いDPツールだけではその効果が十分に発揮されない。実際に多くの一流企業が、営業部門でDPを受け容れてもらえるようなアプローチを実施している。そうしたアプローチが、DPツールがもたらす価格の科学的合理性と営業部門で蓄積されたノウハウの融合を実現するのだ。
ある化学メーカーは、こうした適切なDP導入により自社のEBITDAが年間64億円上昇と売上利益率8%上昇が見込めると推計した。同社は、DP導入に加え、営業部門の社員トレーニングプログラムを実施したことで、たった1年間で大きな成功を収めた。
総括
ダイナミックプライシング技術は競争の先頭に立ち続けるためには必要不可欠となった。しかしながら、ツールやアルゴリズムだけでは十分とは言えず、社員とその導入・実行プロセスに細心の注意を払わなければ、大きな効果を見込めないと認識せねばならない。
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