個席分析で見えた、スタジアムの本当の姿──清水エスパルスが実現した販売戦略のアップデート

はじめに

清水エスパルスは、日本の静岡県静岡市をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。 

同クラブでは、チケット販売の最適化とファンの観戦体験向上を目的に、これまでにもダイナミックプライシングの導入や販売データ分析など、さまざまな取り組みを積極的に進めてきました。 

その一環として、2024年冬から2025年初頭にかけて、座席ごとの需要を可視化する「個席分析」を実施。 
スタジアム内の1席1席がどのように売れているのかを、データで可視化することで、席割の改定や標準価格の検討などのチケット戦略に活用することを目指しました。

今回は、チケット担当者の方にその分析の経緯や得られた発見、そしてクラブ内での活用の広がりについてお話を伺いました。 

個席分析のイメージ図

座席データの可視化がもたらした「販売戦略の精度向上」

Q.分析を依頼されたきっかけを教えてください。

昨年の12月から今年の2月頃にかけて、座席単位での需要を可視化する「個席分析」をお願いしました。

依頼当時は、エリアごとの販売状況を感覚的には把握していたものの、実際にどのセクションが売れているのか、あるいは埋まりが遅いのかを数値で正確に把握できていない状態でした。
これまでも「この辺りは空きが多い」「ここは人気エリア」といった会話はしていましたが、それが本当にデータとして正しいのか確認する手段がありませんでした。

そこで、実際の来場実績データを可視化し、どのエリアをキャンペーンや招待施策に使うべきかを感覚ではなく根拠をもって判断できるようにしたいと考え、分析を依頼しました。

感覚とデータのズレを見える化

Q.分析結果を初めて見たときの印象はいかがでしたか?

非常にポジティブな印象でした。

大きな傾向としては、自分たちの感覚とデータが概ね一致しており、感覚とデータがあっていることを確認することができました。

一方で、販売スピードやエリアごとの収容率など、細かい部分では意外な発見が多かったです。
たとえば、「ここは売れ行きが遅い」と思っていたエリアが実際には平均的な販売速度だったり、逆に「順調だ」と感じていたエリアの数字が意外と低かったり。
こうしたギャップを数値で客観的に確認できたことが非常に有益でした。

感覚と現実のズレを可視化することで、自分たちの販売戦略やタイミングの精度が一段上がったと感じています。

販売戦略の判断材料としての可視化

Q.ヒートマップを業務の中でどのように活用されていますか?

販売データを可視化することで、チケット施策の判断材料として活用できるようになりました。

たとえば、キャンペーンや招待施策を行う際に「どのエリアを優先的に使用するか」「どのブロックを残しておくか」といった検討に役立っています。

これまでは経験則や感覚で決めていた部分が多かったのですが、ヒートマップによって明確な根拠をもって判断できるようになりました。

スタジアム全体で見ると大きな差はないものの、細部の傾向を把握することで意思決定のスピードと精度が向上しています。

現在も販売計画を立てる際や、キャンペーンエリアを検討する際には参考データとして活用しています。

データが社内の共通言語に

Q.他部署や経営層への共有など、社内での活用はありますか?

経営層と現場メンバーでの議論において、ヒートマップを見ながら、「このエリアは招待で配布しているが、実際には販売に回せるのではないか」といった議論が生まれるようになりました。

これまではなんとなくの感覚で話していた部分も、今はデータを共通の前提にして話し合えるようになった点は大きいです。特に「招待席を減らして一般販売を増やす」というテーマでは、データをもとに建設的な意見交換ができるようになり、社内の意思統一や方針決定にもプラスの影響が出ていると考えています。

個席差額設定への展開

Q.今後、どのような分析や取り組みに発展させていきたいと考えていますか?

来シーズンからは個席差額設定が導入され、Jリーグにおいても1席ごとに価格を設定していくのが主流になっていくと思います。

エスパルスとしてもすでに全席指定化を実現しているので、ここで培ったノウハウをもとに、よりファンに納得いただける価格運用を目指していきたいと考えています。

経営陣も評価「人数と収益、両方を伸ばす」

Q.経営層の評価や考え方についてはいかがでしょうか 

現経営陣はDPによる収益最大化に対して非常に前向きな考え方を示してくれています 
集客人数だけでなく、興行収入も重要なKPIとして見てくれています。 
「人数も売上も両方伸ばす」そういう理解を持っている会社だと思います。
稼げるところでしっかり稼ぎ、観戦体験やチーム強化に還元するという流れを意識しています。 

まとめ

清水エスパルスでは、ダイナミックプライシングの導入に続き、座席単位での販売データを可視化するヒートマップ分析を行うことで、「感覚に頼らない販売判断」を実現しました。

分析によって、スタジアム内の販売傾向を客観的に把握できるようになり、施策の優先順位や招待席の活用方針など、現場レベルの意思決定の精度が高まりました。

また、データをもとに経営層と議論できるようになったことで、チケット戦略がクラブ全体の共通課題として共有されるようになった点も大きな成果です。

今後は、座席差額設定の導入を見据え、さらなる販売最適化とファンにとって納得感のある価格設計を目指していきます。

ダイナミックプラス株式会社は、こうしたクラブの挑戦を支えながら、スポーツを通じた持続的な収益モデルの構築と、ファンの皆さまへの新たな価値提供に今後も貢献してまいります。

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