ダイナミックプライシングがもたらす「観戦体験価値の再構築」

はじめに

清水エスパルスは、日本の静岡県静岡市をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグに加盟するプロサッカークラブです。 

同クラブでは、2021シーズンよりダイナミックプライシングサービス「D+」を導入。 
以降4年間にわたり、チケット販売の最適化やシーズンシート・ファンクラブへの波及効果など、 多角的な視点で価格運用を進化させてきました。 

 今回は、チケット担当者の方に導入から現在に至るまでの取り組みや、運用を通じて得られた気づき、 そしてクラブ内外での意識の変化について詳しくお話を伺いました。 

値上げへの理解を生む「還元」と「納得感」

Q.価格変動に対して、ファンから反対の声はありましたか

「みんなが手頃に観に行ける価格でチケットを運用すべきだ」といった声をいただくこともありました。 
ただ、そこはクラブとして丁寧な説明や使い道を示すことで、ご理解いただく部分だと思っています。 

チケットの価格を適正に上げる分、できるだけ観戦体験の向上やスタジアム環境の改善に使っていきます。それが結果的に選手の強化費などに還元され、チームの全体の強化に繋がるのであれば、サポーターの皆さんにとってもプラスに感じていただけるのではと考えています。

大事なのは、価格の使い道をしっかり説明することだと思っています。 
「値上げ分をどう還元しているのか」をクラブの取組みとしてきちんと見せていくことで、ご理解いただけるよう努めています。

実際、ここ数年でホームスタジアムであるIAIスタジアム日本平が満員になる試合も増えました。 
価格が上がっても納得していただける価値を提供する、それがDP運用の根底にあると思っています。 

DP導入で高まった「シーズンシートの価値」

Q.DP導入で高まった「シーズンシートの価値 

間違いなく、シーズンシートの販売数増加につながっていると感じています。 
これはダイナミックプライシングを導入したことだけが理由ではありませんが、DPを導入して単券価格が上がることで、相対的にシーズンシートをご購入いただくことの価値が高まったと思います。 
価値が高まったことで、「年間で応援するならば、シーズンシートの方がお得だ」と感じていただけるようになり、その結果としてシーズンシートの販売数が増え、チケット販売価格の考え方を見直すきっかけにもなりました。 
DPの導入によって、販売数の増加だけでなく、販売価格の適正化や向上にもつながっていると実感しています。 

また、後援会(ファンクラブ)についてもクラブ経営上、ポジティブな効果が出ています 
ここ数シーズンは来場者数も年々増えており、「早くチケットを確保したい」という需要が増えています。 
現在はほとんどの試合でDPを運用していることもあって、お客様が試合に近づくと需要に比例して価格が上がりやすいという仕組みを自然に理解してくださっているように感じています。 
その認識がファンクラブ入会の動機にも繋がっており、結果的にファンクラブの価値向上にも繋がっていると考えています。 

ファンクラブ先行で早く買う文化が定着

Q.チケット販売の傾向に変化はありますか 

はい、購入スピードは明らかに上がっています。 

特に後援会(ファンクラブ)先行販売の段階での購入枚数が増えました。 
「早く買うことで好きな席を選べる」「早い方が安く買える」という認識が広がっているので、 お客様の中でも「先に買おう」という動きが明確に出ています。 

DP定着のカギは「やりきる覚悟」と納得の設計

Q.DPを定着させる上で、サポーターへの理解促進などで意識されていることはありますか 

正直に言えば、やりきるしかないと思っています。 
どんなに丁寧に説明しても、クラブ側の考えに対し100%ご理解いただくことは難しいです。 
価格が上がることへのネガティブな声は、どんな業界でもあります。 

ただ、我々が意識しているのは「価格に見合う価値を提供すること」。 
たとえば、ご来場者プレゼントを配る試合は、サポーターの皆様からも人気があり、価格が上がりやすい傾向にあります。 
お客様が「この試合は少し高いけど、プレゼントがあるから納得」と思えるように、プレゼント自体の魅力を高めるなど、単に値上げするのではなく、納得感を持って受け入れてもらうための施策設計が大事だと考えています。 

成果が数字で見えることで、社内理解が進む

Q.DP導入による社内への影響や認知度についてはいかがでしょうか 

社内の認知度はかなり高まっています。導入当初はネガティブな声もなくはなかったと聞いていますが、今は収益の伸びという数字で見える形での成果が出ているので、クラブ全体での理解度の向上が進んでいると考えています。 
J2にいたここ2年(202324年)でも、クラブ史上最高の興行収入を更新し続けています。 

もちろん今でも「本当にこの価格が適正なのか」という議論は日々行っていますが法人営業部など他部署の担当者も、目的を理解した上で対外的なコミュニケーションをとってくれています。 

経営陣も評価「人数と収益、両方を伸ばす」

Q.経営層の評価や考え方についてはいかがでしょうか 

現経営陣はDPによる収益最大化に対して非常に前向きな考え方を示してくれています 
集客人数だけでなく、興行収入も重要なKPIとして見てくれています。 
「人数も売上も両方伸ばす」そういう理解を持っている会社だと思います。
稼げるところでしっかり稼ぎ、観戦体験やチーム強化に還元するという流れを意識しています。 

「DPの適切な運用方法」を試行錯誤

Q.この4年間で価格設定に対する考え方に変化はありましたか? 

ありますね。価格設定だけでは、集客が完全に賄えるものではないと感じています。
DPは単に価格を動かす仕組みではなく、試合そのものの価値を高めるための手段として活用すべきだという理解に変わりました。 

チケット販売の全体戦略として、DPによる価格設定だけでなく、キャンペーンや優待施策などを組み合わせて運用することが重要だと考えています。 
そうした複合的なアプローチによって、より多くのお客様に来場していただけるようになりましたし、運用も安定し、結果にもつながるようになりました。 

ここまでの考え方にたどり着くまでには、担当部門においても時間がかかりました。 

時間をかけながらクラブとして「DPの適切な運用方法」を試行錯誤してきたことで、ようやく最適な形を見つけられてきたと感じています。 

まとめ

清水エスパルスでは、2021シーズンからダイナミックプライシングを導入し、 チケット販売の最適化とファンにとって納得感のある価格運用を目指してきました。 

 運用を重ねる中で、収益性の向上だけでなく、シーズンシート販売数の増加やファンクラブ会員の拡大、さらには観戦体験の質の向上といった多面的な成果を実現しています。 

 ダイナミックプラス株式会社は、今後もこうしたクラブの挑戦を支え、スポーツを通じた持続的な収益モデルの構築と、ファンの皆さまへの新たな価値提供に貢献してまいります。 

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