CEOメッセージ 平田 英人

価格を通じて
日本の経済と国力を
上げていく

代表メッセージ(創業ヒストリー~今後の展望)のアイキャッチ画像

産業不安定性と雇用創出の重要性

学生時代を振り返ると、今につながる出来事が2つあります。

1つ目は、「産業がなくなること」を体感したことです。
父は、当時世界一とも言われていた船舶業界で船の設計士をしていましたが、不況に陥り、転職を余儀なくされました。
やりたい仕事や事業が、時代の変化とともになくなってしまう――その現実を、身をもって感じました。

2つ目は、「就職氷河期を経験したこと」です。
私が就職活動を行っていた時期はまさに就職氷河期で、良い大学を出ても1~2割の人しか就職できない時代でした。
経済状況によって働き口が失われる現実を前に、「この状況をどうにかしたい」と強く思いました。

この2つの経験から、「なくならないもの」「雇用を生み出すことの重要性」の2点が、常に頭の中にあります。

今思い返しても、“価格”はなくならないものです。
そのため、価格に特化したサービスを提供しているのは、この時の原体験があったからだと感じています。

ダイナミックプライシングとの出会い

三井物産に入社後、先人たちが築いてきた事業のダイナミックさや、それを維持・拡大していく難しさを目の当たりにし、
「自ら事業をつくりたい」という思いを抱き続ける中で、アメリカに駐在する機会を得ました。

アメリカは日本よりも一歩先を行っている――そう漠然と思っていましたが、実際に現地で生活する中で、モノの価格が当たり前のように変動していることを体感しました。

当社の事業のきっかけとなった出来事のひとつが、スタジアムやアリーナのスイートルームに関する話です。
米国では、契約していても全日程でスイートルームを使用できない場合、使わない日は「ブローカー」と呼ばれる人がリセールを行っていました。
これは非常に経済合理性が高く、理にかなった取り組みだと感じました。

中でも大きな原体験となったのは、アメリカからの帰国直前に開催された、松井秀喜選手の引退試合のチケット購入時のことです。

当時、シーズンの人気試合でもチケットは平均300ドル程度でしたが、引退試合で人気の一塁ベンチ裏の座席は850ドルでした。
同じ試合でも、外野席では10ドル程度で観戦する人もいました。
私は、その人気席の3列後ろの席を500ドルで購入し、試合を観戦しました。

自分としては、850ドルという価格を目にしていたことで、500ドルが相対的に“安い”と感じられたのです。
この経験から、「人によって支払い意思額(willingness to pay)は異なる」ということを実感しました。

だからこそ、需要と供給に基づいて価格を算出することは当然であり、
それはスポーツをビジネスとして成り立たせていくうえで非常に重要だと考えるようになりました。

当時の日本ではチケット価格が一律だったため、この“価格の時差”をビジネスの機会と捉え、
ダイナミックプライシングを日本に展開することが、スポーツビジネスの発展に必要だと確信しました。

アメリカ帰国から創業まで

帰国後、出向先にて一緒に出向していた仲間とともに、ダイナミックプライシングを日本で展開するための準備を始めました。

業務の傍ら、チケットに詳しい方とのコンタクトやプレイガイドとのやり取りを行い、知見を深めながら、
スポーツチームやレジャー施設などと実証実験を重ねました。

実証実験の中で、当時の提案先の社長でさえダイナミックプライシングを知らないことが分かり、
「野球界で広めるチャンスがある」と感じました。

実証実験も成功を収めたため、本格的に事業化に踏み切ることにしました。

当社のMVVへの想い

当社のMVV(Mission・Vision・Value)は、コロナ禍を契機に一度見直し、2020年に社員の意見を取り入れて策定しました。

私自身の価値観としては、
 ・信念をもって行動する
 ・相手の期待を上回ることを常に追い求める情熱を持つ
 ・目の前の利益ではなく、長期的な利益を重視する
といった想いをMVVに込めています。

また、製品に関わる考え方としては、
 ・相手目線
 ・三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)
これはまさに、ダイナミックプライシングで実現したいことそのものです。

売り手にとっては企業価値の向上につながり、買い手にとっては価格の選択肢を広げ、安価に購入できる機会を提供できる。
さらに世間にとっては、昨今問題となっている転売問題の解決にも寄与できると考えています。

この価格サービスを提供するうえでは、売り手・買い手・世間、それぞれの視点を意識することが重要であると、社員にも伝えています。

今後の展望

価格は非常に重要なものであり、経営の根幹です。

しかし実際には、「なんとなく」や「経験則」によって決められている業界が非常に多いと考えています。

現在は、スポーツ・エンタメ、高速バス、ホテル、レジャー施設などで弊社サービスをご活用いただいていますが、
今後、データが蓄積されることによって、さらに多くの業界で価格最適化が可能になると考えています。

さらに価格の最適化を突き詰めていくと、個々人のwillingness to payの違いに着目した、
パーソナライズドプライシングという世界観が見えてきます。

同じ商品でも価格が異なる――これが果たして良いことなのか?と問われることもあるかもしれませんが、
一人ひとりにとって価値と価格が見合っている世界観こそが、当社のMissionに即した社会だと考えています。

当社は個人情報を収集していませんが、生成AIの進展により、さまざまなデータ分析が可能になる時代が、近い将来必ず訪れます。

その時に、真の意味で「価格の最適な世界」を実現できると信じており、
私たち自身がその世界をつくる担い手となっていきたいと考えています。

2023.12.15
代表取締役 平田 英人

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