建設向けの鋼材価格が急騰しています。鉄鉱石などの原材料価格が新型コロナウイルス禍の需給バランスの崩れなどで高止まりしていたところに、ロシアのウクライナ軍事侵攻による資源エネルギー価格上昇が追い打ちをかける中、鉄鋼各社は大幅な値上げを立て続けに打ち出さざるを得なくなっています。それでも収益確保は難しく、各社は引き続き追加の値上げを模索していく構えで、マンション価格やオフィスビルの建設コストへの影響が懸念されています。ただ、建物の発注元企業や建設会社の間では工事を延期する動きも出始めており、どこまで値上げを浸透させられるかは不透明です。
日本製鉄は代表的な建設向け鋼材で、ビルの柱や梁に使う「H形鋼」について、一般流通価格を3月契約分から1トン当たり7千円値上げしました。2月契約分でも3千円引き上げたばかりで、値上げは2カ月連続です。令和2年7月以降だけで、累計5万9千円の値上げになるとのことです。
日鉄によると、H形鋼の需要は工場や物流施設などの大規模案件に加え、店舗などの中小規模案件向けでも旺盛な需要が目立ちます。これに対し、鋼材の原材料となる鉄鉱石や原料炭の価格は、コロナ禍からの経済回復や中国需要の増加を背景に高止まりが続いています。そこにウクライナ情勢悪化が加わったほか、外国為替市場で進む円安も輸入原材料費を増大させるため、「今回の値上げが浸透してもまだまだ足りない」(東京製鉄)のが実情です。
一方、鋼材価格の高騰は発注企業や建設会社にとっても痛手となります。東京製鉄によると、「工事の予定を延期する動きも出ている」といい、一定の需要が失われる可能性も否めないです。
また、ロシアとウクライナはともに主要な鋼材輸出国でもあります。紛争地域にある製鉄所の休止や港の封鎖、ロシアへの経済制裁で、両国の鋼材生産・出荷は停滞し、欧州やトルコでは鋼材市況が急上昇しており、影響は日本にも及びつつあります。日本鉄鋼連盟の橋本英二会長(日鉄社長)は29日の定例記者会見で「侵攻が長引くと世界の(鋼材)需要に甚大な影響が出る」と危惧しました。
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